泥のにおいもわからない

へっぽこ貧乏女子が侘しい日常やうだうだと考えていることを淡々と吐き出します。

ポケットスクエア ザ・ポケット『グッド・バイ』遠征記

先週末に東京へ行って参りました。目的は贔屓の大空ゆうひさんが出演される舞台『グッド・バイ』の観劇です。午後発の飛行機にのって夜公演を観てそのまま夜光バスでトンボ帰りという、観光なしの本当に観劇オンリーなスケジュールでした。

 

当日は朝からうつ病による倦怠感が凄くて身体が思うように動いてくれなくてピンチ。フラフラ状態のまま家を出て、空港での待ち時間でもカフェでぐったり、東京へ着き開演までの時間潰しも、劇場周辺を散策してみる余裕もなくマルイのコメダでボーッとしていました。

で、コメダで怠い身体と時間をひたすらもて余しているその時間が、なんだか妙に幸せだったんですね。

思えば、平日は仕事に追われ、休日も家にいても家事をしなければ……というプレッシャーで気の休まらない日々。東京という遠く離れた地で、日常からポーンと完全に切り離されて何もすることがなく時間をもて余す。こんな贅沢なことがあるだろうか。

しかし、次に襲ってきたのは何とも表現しがたい焦燥感や罪悪感のような感情。幸せに対する後ろめたさ、今日が終わればまた日常が戻ってくるという、確定された不幸に対する恐怖。私がうつ病を治すためには、今ここにある幸福をそうした感情抜きに純粋に楽しめる訓練が必要だなぁ、とぐったりしながら思いました。

 

そして肝心要のメインイベント、『グッド・バイ』観劇。

もうこの舞台、情報量が多すぎて一回の観劇だけでは到底処理しきれません!何度も観に行ける方が、羨ましいような、しかし複数回観るのも相当疲れるだろうなとも思い。

雨と川の濁流の音に飲まれて感情がめちゃくちゃにかき回される舞台でした。

 

池下重大さんは田島周二と太宰治、大空ゆうひさんは永井キヌ子と津島修治のそれぞれ二役。パンフレットで相関図を見ても、舞台開始冒頭でもよく訳のわからない配役だと初めはちんぷんかんぷんだったのですが、1幕終わりから徐々にその意味が分かってきて、そうきたか! と。 

キヌ子が修治へと変貌する時間は、驚きと悲しみで感情がかき乱されました。

 

池下重大さんは、女性だらけの舞台の中でたった一人の男性。そこにご本人自身の持つ存在感も相まって、「圧」が凄かった。圧倒的なエネルギー。

対して、大空さんの津島修治は、生まれたての赤ん坊のようにひたすらまっさらで繊細ですぐに壊れてしまいそうな印象で。

そんな修治が「太宰治」で在るためには、相当なエネルギーが必要だったということが感じられました。そして、「太宰治」でなければ生きていけなかった悲痛な運命も。

 

それにしても、作中でガンガン響く雨と玉川上水の音。爆音が苦手&うつ病で気が弱っている私にはなかなかしんどかったのですが(苦笑)、あの中に飛び込む修治と太宰、結構タフだよなぁと思いました。いや、ネタバレすると、修治を川に突き飛ばしたのは太宰だったのでした……。

 

グッド・バイ (新潮文庫)

グッド・バイ (新潮文庫)